
CASAリメイク作家のTammyです。
今日は、【「遺品」を通して私が考える故人との向き合い方】についてお話をしてみようと思います。
ちょっとセンシティブな話題ではありますが、人生においてとても大事なことだと思うので、私の経験談も交えながら、一緒に考える時間を持ってみませんか。
着物で日傘制作をするようになったきっかけ
日傘のオーダーメイド制作をするようになってから、今年で5年になります。
最初は着物を解いて日傘にリメイクしようなんていう発想が、私の頭の中にはまったくありませんでした。
それよりもどちらかというと、日傘を作り始めた最初の頃は、オンリーワンのおしゃれにこだわる女性のための日傘を作るイメージでした。
世代で言うと、20~40代くらいのイメージかな。
お好きな市販の生地を購入して送って頂いて、それを世界に1本のお気に入りの日傘に仕立てるという流れ。
日傘にする生地のイメージは、南フランス・プロヴァンス地方のテキスタイルブランドの「ソレイアード」とか、北欧生地の「マリメッコ」とか、イギリスの「リバティ」とかね。
ちなみに当時日傘制作のご依頼を頂いていたのは、ブログを通じて仲良くなった方や、近所の友人、その友人のご紹介者など比較的近い関係の方が多かったです。
それが次第に口コミとなって広がり、いつの間にやら「母の形見の着物を日傘にしてほしい」というご依頼を頂くようになってきました。
今では日傘のオーダーの9割以上は、着物をリメイクした日傘のご依頼であり、お客さまはこのホームページを見つけてご依頼くださった40~60代の女性の方が大半を占めている状況です。
じゃ、なぜ元々予定していなかった着物をリメイクして日傘を作るようになったのか?
それは、あるお客さまから「母の遺品の浴衣を解いて日傘を作ることはできますか?」とお問い合わせ頂いたことがきっかけ。
お問い合わせから、改めて【浴衣や着物でも、解いたらその生地で日傘を作ることができるかも!?しかも浴衣や着物の生地のデザインってとても素敵だから、日傘にすると和モダンでおしゃれだわ!】と思ったのです。
私の予想どおり、着物や浴衣を日傘に仕立てると、元々の着物の印象とはまた少し違う何とも素敵なハイセンスな日傘になりました。
伝統ある日本の着物の美しさは、着物に慣れ親しんでこなかった私にはとても新鮮で、制作のご依頼を受けるたび、お預かりした着物を見てうっとり。
あまりの美しさに、ハサミを入れるのすら躊躇して、制作が進まないなんてこともしばしばありました。
形見の着物で日傘制作のご依頼を頂く身でありながら…
亡くなった母親から着物を譲り受けたけれど、箪笥の奥に何年も入れたまま。
着物として着ようにも着丈が合わなかったり、経年劣化でところどころにシミがあったりして、もう着られない。
けれど、元々は高価なものだし、母の形見なのでそのまま捨てることもできない。
さてどうしたらいいものだろうか。
何年もそういう想いをされてきた方々が、何らかの形で私の制作活動を知ってくださり、思い切って着物リメイクの日傘制作のご依頼をしてきてくださいます。
中には、ご親族やご友人への形見分けとして、1度に10本近くの着物日傘をご依頼頂くケースもありました。
とはいえ、当時の私は自分自身が形見分けに関わったこともなかったので、お客さまがどういったお気持ちで依頼してきてくださるのか、そのリアルな実感がなく、どちらかといえば、美しいお着物で日傘を作らせて頂ける行為そのものがありがたく、うれしかったのです。
けれど、次第にご依頼の数が増えるに従い、私の心の中にもある変化が生まれてきました。
私が作る日傘を手にして、感動して泣いてくださるお客さまがいる。
私が作る日傘を大喜びしてくださって、感謝のお手紙まで送ってきてくださったお客さまがいる。
私の手から生み出すもの(作品)が、まさか感動で涙していただけるほど人の心を動かすことができるなんて!
お客さまの涙を見たとき、今まで味わったことのないような喜びがあったのです。
そして、「リメイク」で日傘を作り、必要としてくださる方にお届けすることは、もしかしたら私の使命ではないかと思うようになりました。
とはいえ、お客さまのお気持ちに精一杯寄り添っているつもりではいたものの、それでもなお、お客さまのお気持ちをまるごと受け止め、理解できているかというと、私にはその自信がありませんでした。
父が亡くなり、遺品整理をすることになったけれど…
そんな折、3年前の初夏の頃、がんで闘病中の実家の父が亡くなりました。
亡き父に対しては色んな感情が入り混じっていて、寂しいやら、腹立たしいやら、悔しいやら。
家族に立つ鳥跡を濁しまくって去ってしまった人だから。
本当呆れるくらい生きることに不器用な父だったのです。
そんな父をここ10年間ほど、心のどこかでずっと許せずにいました。
だから、いざ父が亡くなっても、なかなか遺品整理に実家に帰る気も起こらず、大変な遺品整理を結局はほぼ全部母と弟に任せてしまいました。
私は結婚して遠方に住んでおり、なかなか家に帰ることができなかったという理由ももちろんあるけれど、1番大きな理由は、父と向き合いたくなかったということでした。
そのため父の「形見」という実体のある物も、父を思い出して自分がモヤモヤしそうなので、自分からは一切何ももらおうとしませんでした。
時が経って気持ちが変化することもある。
それから1年が経ち、2年が経ち、何度か帰省するうちに、私の中でまた気持ちに変化がありました。
「日にち薬」という言葉のとおり、あれほどモヤモヤしていた父に対する感情が、いつの間にやら消えていたのです。
代わりに出てきた感情は、生前の父と真正面から向き合えなかったことに対する後悔もありましたが、それ以上に大きくなったのは、生前の父が私の夢をいつも応援してくれていたといううれしかった思い出の方でした。
そして、ふっと心が楽になったんです。
父にようやく心穏やかな気持ちで向き合えるようになりました。
2年以上かかったけれど、やっと私も父の遺品をもらおうかなという気になりました。
それでもらってきた遺品は何だと思いますか?
実は衣類や時計など思い出の詰まった形見らしいものではなく、「アイロン」と「延長コード」が複数個!
理由は、実用的で日常に使えるものだから(笑)
なぜ新品の延長コードを父が沢山持っていたのか、謎だらけですが、今ありがたく使わせてもらっています。
延長コードを見て、亡き父を偲ぶ・・・なんともおかしな光景ですが、そういう寄り添い方もありだと思うのです。
私が考える故人との向き合い方
遺品は故人の想いが宿っているようで、なかなか片づけたり、廃棄がしづらいものですよね。
でも、遺品整理をしながら、思い出に浸ったり、故人と対話をするのも大事な時間ですし、遺品整理をする気が起こらないなら、気持ちがそれに向かうまでそのままにしておいてもいいと私は思うのです。
着物などの遺品がそのままになっていることで、自分を責める必要なんて何もない。
時間が解決してくれるときもあるし、私のように気持ちが変化することもあります。
私は、自分が父を亡くしてようやく着物を託してくださるお客さまのお気持ちに少し近づくことができたような気がしました。
故人との向き合い方は、それこそ人それぞれ。
自分の心をそのまま感じながら、じっくり寄り添えたらいいんじゃないかな。
その中で、遺品整理の1つの方法として、「リメイク」をご提案しています。
リメイクすることで遺品を【自分が日常的に使える物に作り替える】という選択肢も、ぜひ頭の片隅にでも入れておいてくださいね!
手作りは好きだけど、一体何を作ったらいいのかアイデアが思い浮かばないという場合は、良かったらお気軽にご相談ください。
簡単に自分で作れる布小物のご提案などでしたら、もしかしたら私にもできるかもしれませんので(^^)
以上、ちょっと小話でした!
ここまでお読み頂き、ありがとうございました。

Casa de Paraguasの日傘は、
<「リメイク」というひと手間の魔法で、想いをカタチに>
という理念の下、託してくださった方に寄り添い、作り手の顔が見えることを大切にしながら、1本1本時間をかけて手作りしています。
お客さまにとって、「世界に1つの宝物」のような、「愛おしい子ども」のような存在になることを願っています。
「こんなもので日傘って作れるのかな?」
「こういう日傘があったらいいな」
お客さまが作ってほしい日傘のイメージに、できる限りやわらか頭で対応します。日傘のこと、お気軽にご相談くださいね。
なお、今オーダー頂きますと、仕上がりは最短で12月末を予定しています。
1Dayレッスンでしたら作った日傘をその日にお持ち帰り頂けます。
>>レッスンの詳細はこちらから
※ただし、10月の作品展準備のため、9月10月のレッスン開講はお休みさせて頂きます
(※11月以降のレッスンご予約は、今からでも可能です。)
なお、当店はオーダーメイドだけでなく、着物日傘の完成品やリメイク雑貨なども、少しだけですがオンラインショップにて販売しています。
完成品なので、もちろんすぐにお使い頂けます。
オンラインショップで販売している商品は、着物をリメイク制作した私のオリジナル作品のため、すべて世界にたった1つしかないものです。
そのため、完売しましたら、同じものの再販はありません。
お時間ありましたら、ぜひ1度Online shopもご覧くださいね!